「外郎売」をただの早口言葉だと思っている人が多いらしい

意見
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声優やアナウンサーが練習の基礎としている「外郎売」

とりあえずやってみた人も多いのではないでしょうか…。

 

そりゃね。
私も養成所通っていますから、外郎売を諳んじるくらいにまではなりましたよ。
完璧かと言われれば程遠い。

ただ、あれは早く読めばいいっていうものではないし、練習の為のものではないのですよ!!!

 

 

外郎売は、十二代目團十郎の十八番。
つまりは歌舞伎の演目の1つです。

ここでわかった人は、You Tubeでもなんでもいいから外郎売見ましょうね。

 

で、残念にもわからなかった人。

「外郎売」は「芝居」なんですよ。

 

外郎売の根本は、ういろうという商品がいかに素晴らしいかをとくとくと説明し
買ってもらわなければいけないのです。

 

ただ早口に言っていても、相手は聞きませんし
歌舞伎のことが分かっている人であれば、歌舞伎の口上なんかも想像できますよね。

 

 

私は意外と古典芸能って好きなんですよね。
だからこそ、たかが「外郎売」と思ってほしくないのです。

 

やっぱり、色んな人のういろうの売り方があると思うんですよ。
だからいくら諳んじられても、私の外郎売は完成されない。

 

滑舌が良くなったとか、そんなの後からついてくるものなんですよ。
まずはしっかりと読み込め!!!

外郎売は芝居だから、色んな情景や買う人のことを思え。
ただただ早く言うだけなら誰でも出来る。

 

 

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「外郎売」

拙者(せっしゃ)
親方と申すはお立ち会いの中(うち)にご存知のお方もござりましょうが
お江戸を発って二十里上方(かみがた) 相州(そうしゅう)小田原(おだわら)一色町(いっしきまち)をお過ぎなされて
青物町(あおものちょう)を上りへおいでなさるれば、欄干橋(らんかんばし)虎屋藤右衛門(とらやとうえもん)
只今は剃髪(ていはつ)致して、円斎(えんさい)と名乗りまする。

 

元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで、
お手に入れまする此の薬は、
昔ちんの国の唐人(とうじん)、
外郎という人、我が朝へ来たり、

 

帝へ参内(さんだい)の折から、
この薬を深く籠め置き、用ゆる時は一粒(いちりゅう)ずつ、
冠(かんむり)のすき間より取り出す。
依ってその名を帝より、
とうちんこうと賜る。

即ち文字(もんじ)には、
「頂き、透く、香い」と書いて
「とうちんこう」と申す。

 

只今はこの薬、
殊(こと)の外(ほか)世上に弘まり、方々に似看板を出し、
イヤ、小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、色々に申せども、
平仮名をもって「ういろう」と記せしは、 親方円斎ばかり。

もしやお立ち会いの中に、熱海か塔ノ沢へ湯治(とうじ)にお出でなさるるか、
又は伊勢参宮の折からは、必ず門(かど)違いなされまするな。

お登りならば右の方、お下りなれば左側、
八方が八棟(やつむね)、表が三棟(みつむね)玉堂造り、
破風(はふ)には菊に桐のとうの御紋(ごもん)を御赦免(ごしゃめん)あって、
系図正しき薬でござる。

イヤ最前より家名の自慢ばかりを申しても、
御存知ない方には、正身の胡椒の丸呑み、白河夜船、
さらば一粒食べかけて、 その気見合いをお目にかけましょう。
 

先ずこの薬をかように一粒舌の上にのせまして、 腹内へ納めますると、
イヤどうも云えぬは、胃、心、肺、肝がすこやかになりて、
薫風(くんぷう)喉(のんど)より来たり、口中微涼(こうちゅうびりょう)を生ずるが如し、
魚鳥、茸、麺類の食合わせ、其の他、万病速効ある事神の如し。

さて、この薬、第一の奇妙には、
舌のまわることが、銭ゴマがはだしで逃げる。
ひょっとしたがまわり出すと、矢も盾もたまらぬじゃ。
そりゃそら、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。
アワヤ咽(のんど)、さたらな舌(ぜつ)にカ牙サ歯音、
ハマの二つは唇の軽重、開合さわやかに、
あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろを、
一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、
盆まめ、盆米、盆ごぼう、
摘立(つみたで)、摘豆、つみ山椒、
書写山の社僧正、

粉米のなまがみ、粉米のなまがみ、こん粉米の小生がみ、
繻子(しゅす)ひじゅす、繻子、繻珍(しゅちん)、

親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子かへい親かへい、
古栗(ふるぐり)の木の古切口(ふるぎりくち)。
雨合羽か、番合羽か、貴様のきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)、我等がきゃはんも皮脚絆、

しっかわ袴のしっぽころびを、三針針長にちょと縫うて、ぬうてちょとぶんだせ、
かわら撫子(なでしこ)、野石竹(のせきちく)。
 

のら如来、のら如来、三のら如来に六のら如来。
一寸(ちょと)先のお小仏におけつまずきゃるな、細溝(ほそどぶ)にどじょにょろり。
京のなま鱈(だら)奈良なま学鰹(まなかつお)、

ちょと四、五貫目、
お茶立ちょ、茶立ちょ、ちゃっと立ちょ、茶立ちょ、
青竹茶せんでお茶ちゃと立ちゃ。
来るは来るは何が来る、高野の山のおこけら小僧。
狸百匹、箸百膳、天目百杯、棒八百本。

武具、馬具、ぶぐ、ばぐ、三ぶぐばぐ、合わせて武具、馬具、六ぶぐばぐ。
菊、栗(ぐり)、きく、ぐり、三菊栗、合わせて菊栗六菊栗、
麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、合わせてむぎ、ごみ、六むぎごみ。
 

あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、誰(た)が長薙刀ぞ。
向こうの胡麻がらは、えのごまがらか、あれこそほんの真胡麻殻。

がらぴい、がらぴい風車、
おきゃがれこぼし、おきゃがれ小坊師(こぼうし)、ゆんべもこぼして又こぼした。
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、

たっぽたっぽの一丁だこ、
落ちたら煮て食お、煮ても焼いても食われぬものは、
五徳、鉄きゅう、かな熊童子(ぐまどうじ)に、石熊(いしぐま)、石持(いしもち)、虎熊(とらぐま)、虎きす、
中にも、東寺の羅生門には、茨城童子(いばらきどうじ)がうで栗五合(ごんごう)つかんでおむしゃる、

かの頼光のひざもと去らず。
鮒、きんかん、椎茸、定めて後段な、そば切り、そうめん、
うどんか、愚鈍な子新発地(こしんぼち)。
 

小棚の、小下の、小桶に、こ味噌が、こ有るぞ、
小杓子、こ持って、こすくって、こよこせ、おっと合点だ、
心得たんぼの川崎、神奈川、程ヶ谷、戸塚は、走って行けば、
やいとを摺りむく、三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、
小磯の宿(やど)を七つ起きして、
 

早天早々、相州小田原とうちん香、
隠れござらぬ貴賤群衆(きせんぐんじゅ)の花のお江戸の花ういろう。
あれあの花を見てお心をおやわらぎやという。

産子、這子に至るまで、
この外郎のご評判、ご存じないとは申されまいまいつぶり、
角(つの)出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、臼、杵、すりばち、ばちばちぐわらぐわらぐわらと、
羽目をはずして今日(こんにち)お出でのいずれも様に、
上げねばならぬ、売らねばならぬと息せい引っぱり、
東方世界の薬の元締め、薬師如来も照覧あれと、
ホホ敬って、ういろうは、いらっしゃりませぬか。

 

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まとめ

これ自体が芝居であることを意識することで
表現力や滑舌を養うことが出来る。

でも、なぜか芝居であること自体を忘れてしまっている人が多い。

 

古典芸能の衰退ってやつかもしれないけれど
そうじゃなくて、ちゃんとしたウリ文句なんだよというのをわかってほしい。

 

さぁ、あなたはどう売りますか?

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